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いまさらですが、PCR法の原理について

PCRは何の略語?

昨今すっかり耳慣れた単語となった「PCR検査」ですが、このアルファベット三文字”PCR”が何の略語かご存知でしょうか?

 

PCR = Polymerase Chain Reaction

ポリメラーゼ・チェイン・リアクション(ポリメラーゼ連鎖反応)の略となります。
ポリメラーゼは酵素の一種ですが、それが連鎖反応するとはどういうことでしょう?
核酸増幅法とも呼ばれるPCR法ですが、ウイルスなど狙いを定めたDNAの数を意図的に増やすことで検出精度を向上させる手法となります。
本日はその原理をごく簡単にご紹介したいと思います。

PCRの原理

まず、被験者から採取したDNAを短時間で約95℃(これを変性温度というそうです)にまで加熱します。
すると、ねじれたはしごの様に二重らせん構造をしたDNAのステップ部にある塩基の結合が分離し、元々一本だったはしごは片側の柱の部分にステップ部分の半分だけがくっついたもの二本(以下、二本の鎖)に別れます。

 

前回の投稿でご紹介しましたとおり、ヌクレオチドの塩基は決まった相手とだけ対になっていますので(AとT、CとGとが対合)、分離するときにもこの部分(AとTのつなぎ目、CとGのつなぎ目)が分離することになります。

 

さて、二本の鎖に別れたDNAは、その後一気に約50℃まで冷やされそこからまた徐々に約75℃まで加熱されます(この範囲の温度を伸長温度というそうです)。

容器の中には、二本の鎖に別れたDNAだけでなく、酵素の一種であるポリメラーゼ、人工合成された短い一本鎖DNAであるプライマー、そして十分な量の四種のヌクレオチド塩基があらかじめ入れられています。

伸長温度下で、二本の鎖に別れたDNAのうち1本の鎖の一端にポリメラーゼが取り付き、プライマーの助けを借りて、分離したままになっていた塩基に対合する塩基(AにはT、CにはG)を紡いでいくことで、元の二重らせん構造が再生されていきます。
二本の鎖に別れていたDNAのうちもう1本の鎖の方でも同じ反応がおきますので、もともと1つだった二重らせん構造がこの時点で2つになります。

上記の合成反応サイクルを繰り返すたびに、二重らせん構造であるDNAの数が2倍ずつ増加してゆきますので、元のDNAは10サイクル後には2の10乗(=1024倍)に増え、20サイクル後には100万倍、30サイクル後には10億倍に増加します。

PCR法の原理自体はシンプルだが

これら温度上昇と下降を繰り返すサイクル自体は始まってしまえば自動的に進行し、30サイクルで約2時間程度で完了します。
しかし、この前後に検体を濾過して夾雑物や阻害物を除去して検体の濃度を上げたり、そこから狙いとする核酸を抽出したり、サイクル後に狙いの核酸があるかどうかを検出する、といった一連の作業が実際には行われており、これらを如何に合理化できるかといったあたりに技術革新が待たれています。

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ichiro.k
53歳。大手素材メーカーで複数の営業部門、複数のスタッフ部門を渡り歩き、50歳を過ぎて新規用途探索・製品開発に関わる。文系の学部卒で後にMBAを取得した超文系人間だが、周りが理系だらけの職場で長年勤務することで技術の「知ったかぶり」が得意技に。本ブログでも何となくわかったかのような技術ネタを、さわりだけご紹介し読者の方々の「知ったかぶり」度向上に貢献します。