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天体の組成はどのようにわかるか

太陽のように自ら光を発する恒星は、何か燃料になる物質が自らの質量で引き寄せられて天体を形成しています。
太陽の場合は中心核で水素が核融合しヘリウムを作っている恒星で、このような恒星を主系列星と呼ぶのですが、では太陽が主に水素で構成されていることはどのように確認できるのでしょうか?
本日は、その手法である分光観測をご紹介したいと思います。

分光とフラウンホーファー線

太陽光は可視光領域だけでなく人間の目では感知できない周波数帯の光も含めて、様々な周波数の光が混ざってあの色になっていることを過去の投稿でお話ししたと思います。
太陽光に様々な波長の光が混ざっていることは、太陽光にプリズムをかざし、光が虹色に分解されるの見ることで確認することが可能です。

19世紀前半、ドイツの物理学者ヨゼフ・フラウンホーファーは、太陽の分光スペクトルを観察している時に、所々に黒い領域(筋)があるのに気づきました。
虹色に見える光の中に、局所的な周波数帯が抜けている箇所が、黒い筋のように見える現象です。
これは、太陽の上層部(大気)に存在する水素や他の元素(不純物)が、太陽内部から放出される光の中の特定の波長の光を吸収するために起きる現象と考えられており、フラウンホーファーは代表的な黒い筋(吸収線)に名前をつけたそうです。
例えば、「D線」はナトリウム、「H線」はカルシウムが作る吸収線、という具合にです。

分光観測からわかること

このように、天体が放つ光を分光(波長ごとに分解)しスペクトルを得ることを分光観測と呼びます。
分光器と呼ばれる装置を用いスペクトル中の吸収線を調べることで、恒星が主にどんな物質でできているか(組成)や、恒星の温度、密度、ガスの運動状態まで確認することができるそうです。

また、天体そのものの組成だけではなく、天体とそれを観察する私たちのいる地球との間の宇宙空間に存在する物質の推定にも分光観察は利用されています。
宇宙空間に存在するガスを通過してきた光が、分光観測するとガスの成分による吸収線をスペクトル上に示すことを利用しています。
この分析により、星間のガス成分の99.9%は水素かヘリウムであることがわかっています。

ちなみに、フラウンホーファーはプリズム分光器の製作など光学機器のイノベーションへの貢献が大きく、大きく進化したドイツの光学技術は後のカールツァイスやライカを生み出す基礎となったと言われています。

ABOUT ME
ichiro.k
53歳。大手素材メーカーで複数の営業部門、複数のスタッフ部門を渡り歩き、50歳を過ぎて新規用途探索・製品開発に関わる。文系の学部卒で後にMBAを取得した超文系人間だが、周りが理系だらけの職場で長年勤務することで技術の「知ったかぶり」が得意技に。本ブログでも何となくわかったかのような技術ネタを、さわりだけご紹介し読者の方々の「知ったかぶり」度向上に貢献します。