重力に関する説明:ニュートンとアインシュタインの違い
物質に重力が働く仕組みの説明としてニュートンによるリンゴを使った説明が有名ですね。
リンゴと地球という”共に質量を持った物質間には重力が働くため”両者が引きつけ合うというものです。
これに対し、アインシュタインの一般相対性理論では、質量のある物体に別のものが近づくと、”質量のある物体によって空間が曲げられるため”、近づいたものはその曲がった空間に捕われてさらに近づく、と説明しています。
筆者は想像力が乏しいため、これまでこの”空間が曲がる”という説明のイメージがつかないでいました。
ところが今回、とてもわかりやすい解説を見つけましたので、ご紹介したいと思います。
ゴムシート解説
今回ご紹介させていただく解説は『宇宙は何でできているのか 素粒子物理学で解く宇宙の謎』(村山斉著)に記載のあったもので、私はこれを勝手に”ゴムシート解説”と名付けさせていただきました。
以下にその引用させていただきます。
たとえば、やわらかい真っ平らなゴムシートがあるとしましょう。
ここに重い鉄球を置くと、ゴムシートはその部分が下に向かってグニャリと曲がります。
では、そこから数センチメートル離れた位置に別の鉄球を置くと、どうなりますか?
ゴムシートはさらに曲がり、2つの鉄球は、そのへこんだ部分に向かって転がります。
そして最後には、コツンとぶつかる。
ゴムシートが目に見えない素材でできていたら、お互いが引き合ってくっついたように見えるはずです。
このゴムシートが「空間」、2つの鉄球は「リンゴ」と「地球」(あるいは「地球」と「太陽」)だと思ってください。
いまのたとえ話は2次元の世界ですが、同じことは3次元空間でも起こります。
それがイメージできれば、アインシュタインの言いたいことが大まかに理解できたと思っていいでしょう。
物質の重さによって空間が曲がるから、物質がお互いに引き合っているように見えるわけです。
(原文の改行位置を変更しています。)
いかがでしょうか。
実にわかりやすいと思いませんか?
重力レンズ効果
ゴムシート解説により、筆者は質量のあるものが空間を曲げるイメージがつくようになりましたが、相対性理論では質量のあるものが二つでない場面、つまり質量を持つものが一つの場面でも引力が働くことを説明しています。
光のように質量のないものが質量のあるものに近づいた時に、曲げられた空間の中の最短距離を光が「直進」することで、遠目から見ると光の進路が曲がって見えるのだそうです。
この現象は実際に観測されています。
皆既日食の際に、太陽の近くに見える星の位置が本来見えるべき位置よりもずれて見える現象が有名です。
この場合は、遠くの星の光(質量なし)が太陽の近くを通る際に、太陽の質量による重力の影響を受けて、観測者には曲がって見える現象となります。
このような現象を重力レンズ効果と呼ぶそうです。
星の光はグニャグニャ曲がって私たちに届いている
さて、宇宙において質量を持つ物質は太陽などの天体だけではありません。
以前ご紹介させていただいた通り、暗黒物質や暗黒エネルギーはその正体がわからないものの、合わせると宇宙全体の質量のうち95%程度を占めると考えられています。
これら謎の物質の質量による重力レンズ効果により、私たちの元には天体からの光がグニャグニャに曲げられて届ていると考えられており、実際天体の姿がさまざまな形に歪んで観測されているそうです。
私たちが夜空を見上げて目にしている天体の光が、本来見えるべき位置からずれて見えている、また本来の姿から歪んだ形で見えている、ということは大変興味深いですね。