海水は海水魚にとってもしょっぱい
私たち人間にとって、海水はしょっぱくて飲めたモノではありません。
また海水が目に入ると塩分で目が沁みますね。
でも海で泳ぐ魚たちにとっては、海水が生活圏そのものですので、しょっぱいとか目が沁みるとか言っていられないように思います。
でも実は、海水魚たちにとっても海水を飲むことで塩類を摂りすぎているらしいのです。
塩分環境における浸透圧調節
海水魚たちにとっても、海水の塩濃度は体内の塩濃度を上回ります。
海水のおおよその塩濃度は約3%であり、これに対して魚の体内の塩濃度は約1%なんですね。
そのため、海水魚たちは海水を飲むことで体内に過剰な塩分を取り込んでいることになります。
なぜ海水と海水魚の体内の塩濃度に差があるのかについては諸説あるようですが、もともと今日の魚類の祖先たちが進化する過程では塩分濃度の低い汽水域の環境で進化して各器官の基礎的な構造が出来上がり、その後海水域へ生息域を拡大したから、というのが私としては一番もっともらしく感じます。
さて、塩分を取り過ぎてしまうと、体液との浸透圧差により水分を奪われてしまいますので、海水魚たちは必死に塩分を代謝しており、そのために体力を使っています。
具体的にはエラを使ったり肝臓から尿として排出するなどして余剰な塩分を体外に排出します。
塩分カットの海水だったら魚はどうなる?
では、もし仮に海水の塩濃度が魚の体内の塩濃度と同等もしくは若干低い程度であればどうなるのでしょうか?
なんと、通常の海水環境下で魚たちが塩分を代謝するために使用していた体力が温存され、魚の成長が早くなるそうなんです。
実際、養殖技術として塩分濃度を低めにコントロールした水を用いることが実践されており、海水と同じ塩濃度の環境下で養殖するのと比較して、魚たちが所定の大きさに生育するための養殖期間が短縮できるそうです。
例えば、キジハタでの実験例では、通常4年間ほどかかる養殖が3年未満になるような報告があるようです。
海水魚たちが塩分を代謝するのに体力を消費しているというのが驚きですね。
私自身も若いころにしょっぱいスナック菓子を食べすぎたせいで身長があまり伸びなかったのかもしれません(非科学的)。