Uncategorized

肥満の原因は怠惰でなく、感染症かもしれない。

本日も前回に引き続き、アランナ・コリン著、矢野真千子訳『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』に記載されている驚くべき説をご紹介させていただきます。

 

現代人の肥満はかつての人類が経験したことのない速度で進行しており、「2030年にはアメリカの人口の86%が過体重または肥満になると予想されている」のだそうです。
肥満の原因として、食べ過ぎまたは運動不足といったように、摂取カロリーと消費カロリーの物理的な差異がどの程度であったか、に焦点が当てられることが多いと思います。
ところが本書は、肥満の原因はそれだけでは説明できず、一種の感染症かもしれないと示唆しています。

肥満の奇妙な広がり方

本書の著者は肥満の奇妙な広がり方に注目しています。
過去35年間にアメリカではテキサスなど南東部の州を震源地として肥満が北部と西部に広がるように波及して行ったこと、また大都市で肥満が流行するとそこを中心として周辺に広がって行ったことを指摘しています。

 

さらに、体重と対人関係に関する調査からは、「ある人が肥満になるかどうかは、その人の家族や親友の体重増加と強い相関関係がある」とそうです。
配偶者が肥満になった場合に、その人自身も肥満になるリスクは37%上昇し、親友が肥満になるとその人も肥満になるリスクは171%上昇すると。

 

同じ時間を過ごし、同じ食事をし、同じトイレを使う、つまり同じ微生物を共有する機会の多い人同士で肥満が伝染している可能性を指摘しています。

生化学的な体重調整システム

そもそも、体重の増減は摂取カロリーと消費カロリーの物理的な差異だけでは説明がつかず、腸内細菌の働きによる生化学的視点からも説明がつくとのことです。
確かに、同じような量の食事ををとっても太りやすい人やそうでもない人がいたり、同じような運動量の人同士でもすぐにダイエット効果が出る人やなかなか効果が出ない人がいるので、単純に物理的な計算だけではない気がします。

 

本書の筆者の説明は、食べ物からエネルギーを引き出す機能を体内の微生物が担っており、食べ物から得るカロリーを決めるのは体内の微生物群がどのような働きをするかだ、というものです。
そして、摂取カロリー量に大きく影響を与える腸内の微生物集団が何らかの原因で本来の働きをしなくなると、体重が増えても食欲を抑えて体重を調整する正常なシステムが機能しなくなると説明します。

アデノウイルス(AD36)がニワトリを太らせた

では、腸内の微生物の働きを阻害する要因は感染症なのでしょうか。
米国の実験で、アデノウイルス(AD36)に感染させたニワトリが太り、別のアデノウイルスに感染させたニワトリが太らなかったという結果が出たそうです。
また、ヒトに関する調査でも肥満者の30%がAD36の抗体を持っており、肥満でない者の11%を上回っていたそうです。
なんと、「通常、(中略)脂肪細胞は中身が空の細胞でできており、エネルギーが余っているときその細胞を脂肪で満たす」のですが「AD36に感染したニワトリの脂肪細胞は、エネルギーが余っていなくても脂肪の貯蔵に励む」のだそうです。
驚きですねー。

 

本書の筆者は特定のウイルスと肥満の流行との因果関係について、断定的な記載を避け慎重な記述に徹していますが、肥満を単なる生活習慣病と片付けるのではなく感染症による生化学的な機能障害である可能性を示唆し、我々に新たな視点を与えてくれています。
私、そしてあなたの中年太りも怠惰のせいだけではない、かもしれないのです。

ABOUT ME
ichiro.k
53歳。大手素材メーカーで複数の営業部門、複数のスタッフ部門を渡り歩き、50歳を過ぎて新規用途探索・製品開発に関わる。文系の学部卒で後にMBAを取得した超文系人間だが、周りが理系だらけの職場で長年勤務することで技術の「知ったかぶり」が得意技に。本ブログでも何となくわかったかのような技術ネタを、さわりだけご紹介し読者の方々の「知ったかぶり」度向上に貢献します。