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国際宇宙ステーションが高度400kmの軌道を運行する理由

意外と地上と近いところを運行する国際宇宙ステーション

以前の投稿で国際宇宙ステーション(ISS)が地上から高度400kmの軌道を運行していることをご紹介しましたが、これを初めて知った私の感想は「意外と低いところを飛んでいるんだな」というものでした。
地球の直径が約13,000kmであることを考えると、ISSは宇宙空間といえど「地球のすぐ上」を飛んでいる感じがします。
これに対して、気象衛星ひまわりなどの静止衛星は、地上から約36,000kmの軌道を運行しています。
ISSとは比較にならないほど高いところを飛んでいるんですね。

バン・アレン帯

ISSがなぜ高度400kmの軌道を運行しているかを理解するために、宇宙から地球に降り注ぐ放射線の存在を理解する必要があります。
地球には、太陽から発せられる太陽宇宙線や、天の川銀河内部の超新星残骸から銀河宇宙線が降り注いでいます。
地球上にいる私たちは地球の持っている地磁気や大気によって大幅に弱められた宇宙線(放射線)しか被曝していないのですが、地球の近傍の宇宙空間に出るとこれらを大量に被爆することになります。
特に、地球の地磁気によって放射線が閉じ込められた帯状の空間が地球を取り囲むように存在しており、これを「バン・アレン帯」と呼ぶそうなのですが、地球に近いところにある「内側」で地上より1,000-5,000km程度、遠いところにある「外側」で地上より15,000km-25,000km程度のところに放射線が閉じ込められているそうです。

ISSでは地球上の約1,000倍の宇宙線を被爆

ひまわりなどの静止衛星は無人であり、バン・アレン帯を通過する航路で移動することに人体への影響を考慮する必要がありません。
しかし、ISSは人間が長期滞在する施設ですので、放射線の被爆量を最低限に抑える必要があります。
そこで、バン・アレン帯の「内側」、つまり地上より1,000-5,000km程度に達しない高度での活動が現状は望ましいのです。
それでも、高度400kmの上空にあるISSでは地球上の約1,000倍の宇宙線を被爆してしまうそうです。

将来、人類が活動領域を火星など他の惑星へ拡大するためには、放射線対策は避けて通れない課題です。
逆に、地球の地磁気と大気のありがたさを改めて感じた次第です。


ABOUT ME
ichiro.k
53歳。大手素材メーカーで複数の営業部門、複数のスタッフ部門を渡り歩き、50歳を過ぎて新規用途探索・製品開発に関わる。文系の学部卒で後にMBAを取得した超文系人間だが、周りが理系だらけの職場で長年勤務することで技術の「知ったかぶり」が得意技に。本ブログでも何となくわかったかのような技術ネタを、さわりだけご紹介し読者の方々の「知ったかぶり」度向上に貢献します。